早尾貴紀:原発震災関連

アクセスカウンタ

zoom RSS みなさまにお礼/脱出にともなうさまざまな困難

<<   作成日時 : 2011/03/18 03:39   >>

トラックバック 0 / コメント 0

(17日深夜〜18日早朝にかけて記す)

みなさま

 今日も長い長い一日が終わりました。
 早尾です。BCCの第5信になるかと思います。

 まずは、昨日のバスチャーター代の支援のお願いに、本当にたくさんお方々から迅速にお申し出をいただき、ありがとうございました。心から感謝いたします。
 おかげさまで、今日は無事に二台のバスが仙台から新潟に辿り着くことができ、そこから、まさに北海道から沖縄までそれぞれ避難しました。また、ほかに頼るところのない二家族が、関西方面で私たちの仲間が用意した住居へ避難すべく、現在夜行バス・列車でこちらに向かっています。
 新潟では、皆川がバスを待ち受け、一時的な宿泊施設やその先の陸路・空路での移動方法などを案内しました。

 また、他にも、まだ判断に迷っている人、離れる準備ができないでいた人、家族を説得できなかった人たちが、出たくても出られないでいましたので、結局、明日もチャーターバスを出すことになりました。やはり小さな子どものいる家庭がほとんどで、夜まで希望者が出続け、中型バスの定員の28人をちょっと越える30人程度になりました。小さな子どもは膝の上でなんとか。

 みなさまからの支援のおかげで、もう十分、明日のバスのチャーター代もカバーできることになりましたし、さらに明日のバスに乗る決断がつかなかったけれど、明後日にも出るならそれまでに家族と話し合う、などという人が複数いたため、明後日もバスを手配することになりそうです。

 こうして脱出の希望者が出るのに対して、すぐにバスの再手配を決めることができたのも、寄せられた援助のおかげでした。お礼申し上げます。
 もうすでにチャーター代としては十分に集まりましたので、現時点まででお申し出いただいた分をもって、援助金のお願いはいったん停止することにします。ほんとうにありがとうございました。

    *    *    *

 なかには、もっと組織的に大きく公然とプロジェクト化すべきである、という意見もいただくこともあるのですが、昨日一日、30人を受け入れるにあたって、その必要性を感じつつも、それはとてもとても難しいことだと思いました。

・これは、あくまで個人の判断と行動で成り立っている脱出です。政府や行政からすれば、「30km」よりもずっと外側で、不要な不安を煽っている行為だ、ということになります。それを、原発の専門家でもない私たちが、公然と外に向けて組織的展開をすれば、さまざまな軋轢を生んでしまうことになります。もちろん、私に担いきれないという力量の問題もあります。

・赤尾光春さんや岡真理さんや東琢磨さんらの尽力もあって、頼る先のない一家の一時居住場所は、脱出する人数に比して十分に確保されています。本当に感謝です。しかし、問題は「出る」という決断を最終的に下すことのできない人があまりに多い、ということです。難しいのは、仙台あたりの被災者は、まずは目の前の物資不足やインフラの復旧、それから家族が固まっていること、そういうことが優先され、原発のことは気になりつつも判断ができない人がほとんどです。「30kmよりもずっと遠い」、「政府・東電が安全と言っている」。それから、脱出したい人でも、「仕事で動けない夫をおいて妻子のみが逃れることで家族が離れてしまうことが不安」、「移動をしたくない親を説得できず、親を置いて自分だけが出るわけにはいかない」ということで、結局断念するケースが多かったのです。

・このために、関西や、さらに関東、名古屋、金沢、広島、沖縄、北海道などなどから仮住居の提供の申し出を受けているにもかかわらず、それに見合う「需要」が出てこないのです。しかし、私が強調したいの次のことです。「いつまで福島や宮城に踏みとどまれるのか、いつになったら限界になって避難すべきなのか」と、被災地内部で不安に駆られるよりも、まずは外部に出て一定の身の安全を確保して、冷静になって、「いつになったら安心して戻っていいのかどうか」を判断すべきです。しかし、難しいことに、震災のショックと、避難生活の疲弊とによって、それができなくなっているように感じます。

・ですので、私自身は、もしかすると仙台には戻れないかもしれないという覚悟をもっていますが、そう言ってしまうとむしろ逆効果なので、「戻ることはいつでもできるのだから、ともかくいったん離れましょう。もし離れたのが無駄になったら、それはそれでいいことではないですか」と、そういうことも言います。私も自分が「不当な扇動者」だった、ということになれば、それにこしたことはないと思っています。そのことで後から文句をつけられてもかまいません。これはある種の賭けです(きっと大丈夫だというほうにではなく、きっとダメなんじゃないか、というほうに私は賭けたわけです)。

・専門家でもない人間の「賭け」は、やはりプロジェクト化するのは難しい、あくまで個人的なネットワークでするしかないのではないか。また、脱出するという判断自体が極めて難しい被災地の人に、判断材料を提供し、自分自身の判断を示し、そして脱出を提案し、実際に避難に踏み切らせるには、たんにMLや掲示板などで呼びかけるのではなく、丁寧に説明するしかないのではないか。そういうふうに思っています。

・また、これは脱出にともなう困難というわけではありませんが、私たちのやっていることが外からは分かりにくいことだと感じたのが、公的な住居提供情報との関係においてです。やや柔軟に対応するとはいえ、基本的にそういった住宅提供は、自宅が全壊か半壊、ないしは避難指示範囲からの避難者であること、というケースに適用されます。しかし、いま私たちのチャーターバスで脱出している人のほとんどは、そのどちらにも当てはまりません。いわば「自主避難」ですので、現段階では公的な住居提供の範囲には入りません。だからこそ、自発的なネットワークによる一時避難の住居がとても大切なのです。私自身ももちろん「被災者」ですが、入居条件の罹災証明書など出ません。

・しかし、現実には福島県全域や、移動手段の極めて限られた宮城県がすでに放射能汚染地域に入っていて、とくに子どもの体内被曝については、いっそう悪化していくかもしれない、にもかかわらず、政府は退避の指示も出さない、当然退避のための手段も提供しない。しかし、政府が退避指示を拡大したときには、もう手遅れなのです。避難パニックが起きて、移動困難になっているなかで、取り残されるのは、すでに被曝している小さな子どもを連れた家族です。行列や渋滞に巻き込まれているうちに、さらに被曝していく、なんてことになったら、取り返しがつきません。だからこその、一刻も早い退避なのですが、一般には「被災者の避難」とは受け止めにくいことなのかもしれません。

・プロジェクト化が難しいことのまた一つの理由は、このバスチャーター方式が、いつまで可能なのか、何回できるのか、先が見えないこともあります。いま頼んでいる会社もいつまで出してくれるか、確証はありません。会社のガソリン在庫が切れるとか、放射能が怖くて仙台に入りたくないという状況になるとか、パニック渋滞で車が動かなくなるとか、さまざまな悪い可能性が考えられます。この方法は、とっさの思いつきでしたし、それを明朝二回目を実施することになったのも、最初から考えていたことではありませんし、すでに三回目が必要だという判断もギリギリのところで、やるしかないか!、というふうに決心したことです(その背中を押してくれたのは当然みなさんからの援助でした)。

 そういうことで、もっと大きく継続的に、という要望があるのは承知のうえで、しかし私自身の余力と、そして最初のチャーター便を計画したときの、上記のような困難の経験から、場当たり的な個人のつながりを越えて組織化・プロジェクト化するということが、いまの自分にはできない、ということをお許しください。みなさまからの援助金は、昨日の二台分に加えて、明朝出発の中型バス15万7500円、さらに明後日も計画している第三便の分に当てさせていただきます。
 そして、みなさまのご厚意で、それでも余る援助の申し出をいただきましたので、それにつきましては、バスのチャーター代としてお願いした趣旨を越えて、もし私たちの呼びかけでバスに乗り脱出してきた子どもたち・家族たちが予想を超えて長期の避難を強いられたり、十分な公的援助を得られなかったときに、そうした家庭に少しずつでも分配することに使うこともあると思います。残金を漠然と赤十字の義援金に回す、などということはしませんので、その点、ご了解いただけましたら幸いです。少しでも子どもたちと親たちの不安を和らげることに使うという点で、チャーター代としてお願いした趣旨を激しくは逸脱しないものと考えています。
 一段落した頃に(いつになるのだろう?)、使い道の概算はご報告申し上げます。

 今日も書ききれないたくさんのことがありました。しかし、一日中電話をかけ、受けていました。そのあいだに、サーバ上の受信ボックスのメール容量がパンクし、それに気がつくまでの30分程度ですが、メールを受け損なったものがあるかもしれません。また、読み切れず返信ができていないメールもたくさんあります。十分応対できなかったことがあればお詫び申し上げます。急ぎ応答の必要のあるものについては、再送、ご指摘ください。

 さて、次の便の9時の出発が徐々に近づいてきました。成功を祈っていてください。

早尾

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

みなさまにお礼/脱出にともなうさまざまな困難 早尾貴紀:原発震災関連/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる